2023.08.28
熨斗紙(のし紙)の知られざる日本の伝統文化とは!?
目次 ➖
先日、オシャレな石鹸屋さんで内祝いを母と兄に送ろうと考え、お店に問い合わせたと
ころ、「発送はできますが、当店には熨斗(のし)紙のご用意はございません」とのこと。
「Why?Japanese people‼」と厚切りジェイソンになったのは言うまでもありませんが、
実際に商品を手に取り、熨斗紙がない理由が分かりました。
ということで今コラムは、「オシャレな洋風な商品に熨斗紙は合わない!」、
「熨斗ってそもそも何だっけ?」、「オシャレな熨斗紙があったらいいのかな?」と
包装紙屋のくせに灯台下暗しだったという話の3本立てでお送りいたします。
1.オシャレな洋風な商品に熨斗紙は合わない!
先程の話、SABON(サボン)というお店でハンドソープやボディーソープを詰め合わせ
て購入したのですが、その化粧箱がこちら!
商品自体もさることながら、実にオジサンの乙女心をくすぐるデザインではありま
せんか!確かにこんなオシャレな箱全面に熨斗紙を貼ったら、せっかくのデザインが台
無しになってしまいますな。
とは言え、のし紙を付けないと内祝い感が出ないなと考え、大き目な文房具屋さんへ。
「こんなのしかねえ」
と正直に思いました(製造された方スミマセン。お気を悪くされないでくださいね)。
正確に申し上げるとこの熨斗紙の商品が悪いのではなく、「オシャレな洋風な商品に
熨斗紙は合わない!」ということです。 仕方なく、あまり主張しすぎないこちらの
小さい短冊の熨斗紙を貼りました。
この熨斗紙の「これってそもそも何だっけ?」。
結納の時にあったような…。
鮑(あわび)がモチーフなんだっけ?
干したスルメイカだっけ?
一生に一度しかない出来事なので忘れました(何度もされている方スミマセン。お気
を悪くされないでくださいね)。
ということで調べてみました。
2.「熨斗ってそもそも何だっけ?」
2-1. 熨斗とは
熨斗(のし)とは、祝儀や贈答品などの進物に添えられる飾りのことです。
熨斗を印刷した包み紙を「熨斗紙」といい、包装紙の右上側に配置されることが多く、
水引(みずひき)と併用されることも多いようです。
この右上にある飾りは、「熨斗鮑(のしあわび)」が省略されたものです。
かつては、実際に熨斗鮑を重ねたものを、紙で包んで用いていたようです。
2-2. 熨斗の語源
熨斗とは、「熨す(のす)」という薄く伸ばす意味の漢字(漢検1級漢字デスナ)と
「斗(ひのし)」という干す意味の漢字を組み合わせてできた言葉です。
そう言えば、オジサンがこよなく愛する干した烏賊のツマミも「のしいか」というで
はありませんか!(妙に納得)
2-3. 熨斗の起源
熨斗鮑(のしあわび)の歴史は古く、『日本書紀』の記述によると、倭姫の命(やまと
ひめのみこと)が志摩の国崎を訪れた際に、海女から差し出された鮑の美味しさに感動
し、伊勢神宮に献上するように命じられたのが始まりとされます。
伊勢神宮への熨斗鮑(のしあわび)の献上は、今なお2000年以上も続く、我が国の伝統
と歴史ある文化です。
この献上するよう命じられた海女は、鮑を薄く切って乾燥させ、腐らないように加工
してから献上したとのこと。この作業を「のす」と呼び、薄くなったものを日光で干す
作業が「ひのし」です。
その後、熨斗鮑は儀礼の場面で、祝意を表すシンボルになっていき、 熨斗鮑を作ると
きの「伸す」という行為が、大切な人の寿命や慶事における喜ばしさが末長く続くよ
うにと祈願する縁起に結びついたようです。
(参照元:伊勢神宮献上の文化と歴史を伝承する熨斗あわびの里 国崎町内会 (kuzaki.net))
2-4. 熨斗紙を貼る意味
この熨斗鮑を包装紙の上から貼ることで「生ものを添えました」という意味になります。
贈りものを紙で包むことと同様、贈りものが神仏への供え物という思想に原点がある
ようですね。
2-5. 生もの以外の贈りものに貼るのがしきたり
生もの以外の贈りものに熨斗を貼るのがしきたりで、鰹節や鮮魚などの生鮮品には、
贈りもの自体が生ものなので、のしは不要です。
これは気を付けたいポイントですね(鰹節とかに貼りそう)
もちろん、生ものを供えてはいけない仏前への供物にも熨斗は不要です。
2-6. 熨斗紙と掛け紙の違い
熨斗が付いていない白黒や銀などの水引きが印刷された紙は、正しくは熨斗紙では
なく「掛け紙」といいます。
贈答品に掛ける紙=熨斗紙と思いがちですが、のし紙は慶事の時に使われるもので、
弔事の時は「掛け紙」と言います。
参照元:進物の基礎知識 熨斗(のし)|タカシマヤのご贈答マナー ギフトのマナーガイド
3.「オシャレな熨斗紙があったらいいのかな?」
当初は、SABON(サボン)さんの商品などデザイン性が高い商品には、透明なトレー
シングペーパーや薄紙で熨斗紙を印刷して作れば良いじゃないかと包装紙屋の私は発
想しましたが、色々調べていくうちに日本の文化が好きな私は考えが変わりました
(社長スミマセン。お気を悪くされないでくださいね)。
既に簡略化されている熨斗紙にそれはどうなのかなと。無理に熨斗紙にしなくても
贈り物として気持ちが伝われば良いのではないかと。
先日、御礼でいただいたこちらのイケてるお菓子の掛け紙を見た際に、まさにそう
思いました!
㈱シュクレイさんのキャラメルチョコレートクッキーのパッケージとクッキーが秀逸
掛け紙に「Thank you!!」と白抜きで印刷されているではありませんか!
こういうオシャレな商品には「こういうのが良いじゃない👍」と思った次第です。
熨斗紙同様、十分気持ちは伝わります。
日本人が「熨斗」に喜び祝う気持ちを託して贈り物をする風習も残していきたい
文化ですね。
今宵は「のしいか」で一献傾けますかね。
(文・写真 古長雅行)
■プロフィール 古長雅行
大学では山岳部主将としてマッキンリー登頂を果たした精神力と統率力の持ち主。
現在は、丸みを帯びた風貌でたくさんのファンを持つ制作ディレクター。
お客様のご要望にお応えするため、全力で調査、提案する真面目さをもつ。エコ検定、
CSR検定、自動車整備士の有資格者。趣味はラーメン食べ歩き、建築巡り。